高次脳機能障害とは疾患や外傷により脳が高次の障害、すなわち知的並びに精神的機能が障害された状態のことです。
高次脳機能障害の診断は医学診断ですが、医療領域では医師から心理士に求められる専門性の高い重要な業務です。面接や行動観察と共に心理検査と神経心理学的検査を使用しますので、これらの多種多様な検査について内容をよく知り、施行法を習得する必要があります。まずは全般的知的レベルを抑えた上で特定の脳機能に障害があるか否か、ある場合にはその重症度を診断します。全般的知的レベルを測定するには知能検査を施行することが最も信頼性が高いです。
知能検査はBinet 式とWechsler式があり被験者の病状と診断目的により施行する検査を選択します。特定の脳機能の障害、例えば記憶障害や失語症、左半側空間無視、注意障害などの診断は神経心理学的検査を主に施行しますが、すでにある検査では測定できない症状がある場合もあります。その場合は、当該症状を客観的に示す資料となるような課題を工夫して作成し、施行する必要があります。
本研修会は2日間で高次脳機能障害の診断の実際を学びます。2日間とも午前中は
本研修会主催者、中野光子による講義、午後は各種の心理学的検査と神経心理学的検査の演習を行います。医療で使用されている検査はほぼ全て備えています。受講者は希望する検査器具を何種類でも手に取って演習することができます。
これまでの参加者は検査の施行を指示する立場にある医師や検査を実施する心理士、ST、OT等をはじめとして、ケースワーカー、看護師、介護士、教員、また法曹界から検事や弁護士などカルテや報告書で検査結果を読む立場にある方々です。
<講義内容>
初日:高次脳機能障害
2日目:検査の選び方 所見の書き方
<演習>
各自が希望する検査器具をじっくり一人で演習するのもよし、2人で組んで検査者と被検査者を交代しながら体験するのもよいでしょう。
また、結果を読む立場にある方は検査器具を触りながらマニュアルを読むだけで内容を理解することができます。
<演習可能な心理・神経心理学的検査各種>
WAIS-W(初代〜R〜V)、WISC-W(V)、鈴木ビネーテスト、鈴木ビネーテスト改訂版、田中Binet-X(87年版)、K-ABC心理・教育アセスメントバッテリー、TOM心の理論課題検査、長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)、ミニメンタルステイツ検査(MMSE)、COGNISTAT(コグニスタット認知機能検査)、Raven's Progressive Matrices、WMS-R(ウェクスラー記憶検査)、RBMT(リバーミード行動記憶検査)、Rey's Auditory Verbal Learning Test、レイ複雑図形Rey's Complex Figure Test、ベントン視覚記銘検査、東大脳研式記銘力検査(三宅式言語記銘力検査)、MMS有意味・無意味言語記憶検査、標準失語症検査、WAB失語症検査、Token Test、FAB(前頭葉機能検査)、Stroop Test、ウィスコンシンカード分類検査(WCST中野修正版)、BADS遂行機能障害症候群の行動評価、DTVP(フロスティッグ視知覚発達検査)、ベンダー・ゲシュタルト、標準注意検査法・標準意欲評価法、CAS標準意欲評価法(Clinical Assessment for Spontaneity)、標準高次動作性検査、EDINBUGH HANDEDNESS INVENTORY、CAT標準注意検査法(Clinical Assessment for Attention)、ハノイの塔(Tower of Hanoi)
〈閲覧可能な認知症アセスメントツール〉
FAST(Functional Assessment Staging)
OLD(初期認知症徴候観察リスト)
CDR(Clinical Dementia Rating)
2025年度 前期研修会
112期:2025年 4月26日(土)・27日(日)
113期:2025年 5月 4日 (日休)・5(月休)
時間:10時〜17時(途中、昼食・休憩を挟みます。)
基本的な講義内容は両期とも共通ですが、受講者に合わせて柔軟に調整いたします。
- 講師
- :横浜高次脳機能診断法研究会 主宰 中野光子
- 会場
- :横浜高次脳機能診断法研究所(JR根岸駅より徒歩数分)
- 参考書
- :拙著『公認心理士・臨床心理士のための高次脳機能障害の診かた考え方』
風間書房(2,750円)
- 2日間参加が原則ですが、1日のみの参加も可能です。
- 臨床心理士の方は資格更新ポイントを1日参加で2点、2日参加で4点獲得できます。
- 参加費
- :2日コース 25,000円(学割、repeater 20,000円)
1日コース 13,000円(学割、repeater 10,000円)
- 申込先
- :中野光子 m-naka27@jcom.home.ne.jp
- 住所・氏名・所属・本研修会参加を希望する理由など簡単な自己紹介と、
どこで本研修会を知ったかの情報を添えて以下にお申し込みください。
- ※両日程のお申し込みも随時受け付けております。
なお本研修会とは別に、毎月第3日曜日に知能検査と神経心理学的検査の演習のみから成る勉強会を開催しています。対象は原則として本研修会のOBです。